光る歌い出し

「曖昧なお辞儀は逆に嫌」

ある日友達と入った中華屋で聞こえてきたフレーズだ。

中国人が経営しているような店だったのだがなぜか店内BGMが00年代のJ-POPばかりで「衝動」「Lovers Again」「Prisoner Of Love」「さくら」が再生されていた。

あ、なんか聞いたことがある曲、たぶんaikoだぞ、と友達が話すので調べやすい歌詞が来ないかなと聞き耳を立てていたところこれだ!となったのが冒頭のフレーズである。

調べたところaikoの「milk」という曲で、そこから歌詞の話になった。

「『曖昧なお辞儀は逆に嫌』って難しい語彙が一個もないのにやけに耳に残る内容だな。」

「確かに。」

「いや、前々から話してみたかったんだけど歌い出しがすごい曲があるのよ。」

という感じで歌詞の話になったところにかこつけて宇多田ヒカルの「This Is Love」の歌い出しの引き込みがすごいという伝えてみたのだが全く同意を得られなかったのでここに書いてみる。

「予期せぬ愛に 自由奪われたいね」

「This Is Love」の歌いだしがこれだ。

「予期せぬ愛に」と言う言葉は何かを引き起こす原因なので次に何かが起こることになる。

さあ予期せぬ愛によって何がどうなるんだ……?と待ち構えてしまう。そして「自由奪われたいね」だ。

「奪われたいね」と聞き手に同意を求められる。「ああ、確かに奪われたいのかもしれない」とおれは思うのだが全く同意をされなかった。

いま書いてても「確かになんとなく自由を奪われたいのかもしれないと思う」としか書けない。友人にその場で「個人差じゃん」と返されたがそのとおりだと思う。

でも予期せぬ愛に自由奪われたくないですか……?

激しい雨も不意に芽生える愛も不安と安らぎの冷たい枕とベッドになりませんか……?